「F1」といえば、70年以上の歴史を持つモータースポーツですよね。第二次世界大戦終結後の1950年にイギリスで開催されて以降、長気にわたりファンを魅了してきました。これまで数多くの形式や排気量のエンジンが搭載されてきましたが、F1で最も重要な要素が、エンジンが生み出す馬力と言えます。今回は、F1のエンジンについて、調査しました。
F1のエンジンはどう変わった?
F1はこれまでに大きく分けて、9回のエンジン時代を渡り歩いてきました。ここ近年は技術の進歩により、気筒数や排気量が厳密に決められていますが、時代によっては複数のエンジンが許可されていたこともあったのです。F1エンジンの歴史は非常に深いのですが、以下で詳しく見ていきましょう。
① 4.5L NA / 1.5L過給(1950年~1953年)
F1エンジンの歴史スタートとなったのが、4.5リッター自然吸気エンジンと、1.5リッター加給(スーパーチャージャーorターボチャージャー)です。アルファ・ロメオ159に搭載されていた8気筒エンジンは、425もの馬力を誇っていたと言われています。
② 2.5L NA / 0.75L過給(1954年~1960年)
この時代はエンジンサイズが縮小され、馬力は290馬力まで低下しました。規定上0.75リッターの過給エンジンでも可能でしたが、実際に使用したチームはいません。ランチア・フェラーリD50に搭載されていました。
③ 1.5L NA(1961年~1965年)
この時代は最小重量の制限が450kgとなり、過給式が禁止に。1.5リッター自然吸気エンジンに限定されました。各チームはマシンの前にあったエンジンをミッドシップに変え、ホンダがF1に初参戦した際も、横置き1.5リッターV12エンジンを搭載しました。
④ 3.0L NA / 1.5L過給(1966年~1986年)
排気量:3.0L自然吸気 / 1.5L過給
馬力:1,350馬力
これまでのおよそ2倍となる排気量3リッター自然吸気エンジンと、1.5リッター過給エンジンが搭載。各チームが開発したエンジンは原則そのチームだけで使用されてきましたが、フォードがエンジンメーカー・コスワースに出資し、開発したのがフォード・コスワース・DFVエンジンです。これは他チームにも販売され、エンジンの市販化となりました。エンジン開発に対する壁が撤廃され、多くの独立チームが誕生。マクラーレン、ウィリアムズなどもこの時代に誕生しています。
⑤ 3.5L NA / 1.5L過給(1987年~1988年)
過給エンジンがあまりにも強くなりすぎたことで、1989年には過給エンジンが禁止となりました。猶予期間の間にエンジン移行をおこない、3.5リッター自然吸気と1.5リッター過給が両者存在する時代となりました。圧倒的な強さを誇るマクラーレン・ホンダは、1.5リッターV6ターボエンジンを搭載しています。
⑥ 3.5L NA(1989年~1994年)
猶予期間2年の間に、3.5リッター自然吸気エンジンのみとなりました。エンジンが大幅に変更されていますが、マクラーレン・ホンダが3連覇を成し遂げ、4年連続の王者に輝くほどの強さを見せつけています。
⑦ 3.0L NA(1995年~2005年)
1995年には排気量が3リッターに制限され、レギュレーションで速度を抑える風潮になりました。エンジンがサイズダウンし、チームは軽量化と高回転化を目指しています。はじめは気筒数12以下でしたが、だんだんV型10気筒に限定されました。一般的にV10エンジンの方が軽くて小型化しやすく、信頼性もあるようです。BMW製のP83エンジンは、V型10気筒で最高回転数19,200という驚異の強さでした。
⑧ 2.4L NA(2006年~2013年)
2.4リッターV8エンジンは、スピード抑制とコスト削減のために開発され、3リッターV10エンジンに代わり登場しました。当初はエンジン回転数に制限はなかったのですが、徐々に制限を設け、最終的に1万8000回転までに制限されています。2013年をもって、F1は自然吸気エンジンと決別となったのです。
⑨1.6L ハイブリッド (現在)
2014年以降主流となっているのが、1.6リッターV6ハイブリッド・ターボ・エンジンです。世界的にエコ化を目指している中開発され、運動エネルギーと熱エネルギーを回生する機構が組み込まれています。旧来型のエンジンとは大きく異なるため、エンジンではなく「パワーユニット」と呼ばれることも。ホンダは規定変更後にパワーユニットサプライヤーとしてF1に返り咲き、3シーズンマクラーレンに供給し、2018年にスクーデリア・トロロッソと提携しました。2019年にはレッドブル・レーシングに追加で供給し、2021年にはマックス・フェルスタッペンとドライバーズタイトルを獲得しています。またフェラーリは、現在F1で最もパワフルなパワーユニットを持っているとも言われているようですね。これまでフェラーリは、コーナーで低速からの立ち上がりが最も速かったのですが、高速域ではレッドブルに負けていると指摘されていました。
F1における次世代のエンジンとは?
国際自動車連盟(FIA)は2017年10月31日、F1パワーユニット規定の未来像について、「音量改善」「コスト削減」「小排気量ハイブリッドエンジン継続」という3つを掲げました。ポルシェとアウディは、MGU-H廃止の方針を要求していたので、反対の異を唱えるも、FIAは新規メーカー誘致を目的とし、結果的に合意に至っています。2022年8月にはFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)で新たな規定が承認され、基本のアーキテクチャは継承されるも、エネルギー消費を大幅に削減し、CO2排出量を実質ゼロとするための持続可能な燃料が導入されました。MGU-Hの廃止、現行PUと同等レベルのパワー維持という目標のもと、エネルギー回生システム(ERS)による出力を350kW(476馬力)へと引き上げます。これは120KW(現行)のおよそ3倍に匹敵するようですね。現在、F1ではPUの開発が凍結されているので、フェラーリは許可の範囲内での開発に注力し、新しいエンジンを生み出しています。
まとめ
今回は、フォーミュラ1チームについて、紹介しました。今後は内燃エンジン(ICE)は1.6リッターV6のレイアウトで、回転数を維持しつつ、燃料流量は削減されるという環境に配慮した作り。かつ400kW(544馬力)の出力を目指すということで、エンジンに大きな革命が起こっています。運営側はレースの魅力を最大限に高めるために、エンジンサウンドを高める意向も表明しているようで、今後の開発も楽しみですね!