2015年3月にドイツで開催されたVLNニュルブルクリンク耐久シリーズ第1戦のグリーンシグナルは、今思えば悲しみのシグナルだったのかもしれません。このレースには179台ものレーシングカーが参加しましたが、その内の1台であるヤン・マーデンボローが運転していた車が事故に遭ってしまいました。
しかし、なぜ事故が起きてしまったのかまでは知らない人も多いと思うので、この記事では事故で発生した損害含め、事故の詳細を紹介しています。ヤン・マーデンボローの現在の状況も紹介しているので、応援している人にはぜひご覧になってほしいです。
ヤン・マーデンボローの事故の原因は?
ヤン・マーデンボローがニュルブルクリンクのコースで起こしてしまった事故は、起こるべくして起きた事故と言えます。その理由はニュルブルクリンクの勾配率が17%以上あるからです。実は一般的なサーキットの勾配は10度以下になっていることが多く、それと比較してニュルブルクリンクは倍近くあります。この勾配のキツさは、サッカーのペナルティーエリア内からボールを蹴った場合で説明することが可能です。
例えば、ペナルティーエリア内から蹴ったボールが凡そ17度でゴールネットに行くとキーパーが取れず高い確率でゴールになるとされています。つまりサッカー選手の蹴ったボールと同じ軌道で車が勾配を進んでいくことになります。しかも勾配の先は下り坂になっているため、そんな場所を時速200㎞近くで走れば車は宙に飛び、まさにサッカーボールと同じ状態になります。
車にも原因があった?
レーシングカーは通常の車と違い、ダウンフォースを得るために車の底にプレートを張ってエンジンを隠しています。したがって、少しでも車体のフロントが宙に浮いてしまうと、高速で走っている影響で風が車をドミノのように立ててしまい、転倒しやすくなってしまうのです。つまりニュルブルクリンクの勾配セクションで速度を出したヤン・マーデンボローは、車が宙に浮いてしまいコントロールを失って事故を起こしてしまったことになります。
当時客席でレースを撮影していたファンの映像には、勾配を高速で通過したヤン・マーデンボローの車がドミノのように立ち、クラッシュしている様子が撮影されていました。つまり勾配セクションの影響で、本来車を速く走らせるための仕組みが仇となってしまったわけです。
コースのレイアウトにも問題あり
ヤン・マーデンボローが事故を起こしたのは、ニュルブルクリンクのFlugplatzというセクションですが、このセクション直前のストレートが事故の原因だと思っています。というのもニュルブルクリンクには大小色々なコーナーが多数存在し、ストレートでタイムを稼ぐことが中々できません。そんな中Flugplatzの直前にあるQuiddelbacherHoheのストレートは数少ないタイムの稼ぎどころと見るドライバーも多いでしょう。しかしQuiddelbacherHoheは完全なストレートではなく微妙にカーブしている上に、Flugplatzへのカーブは左右に森林があるため視界が遮られています。
つまりスピードを出したらすぐにFlugplatzのジャンピングスポットがあり、対応できずに宙に浮いた車はコントロールを失い事故を起こすというわけです。事実ヤン・マーデンボローの事故映像では、Flugplatzのカーブに入る前から既に車が宙に浮いていたので、恐らく直前のQuiddelbacherHoheでかなり速度を出していたのでしょう。
ヤン・マーデンボローのドライバー経験に問題はなかったの?
事故発生当初一部ではヤン・マーデンボローのドライバー経験について問題があったのではと噂している人もいました。実はヤン・マーデンボローは他のドライバーのようにカートレース経験が無く、ドライバーになったのもスポンサーが開催したグランツーリスモのレースゲーム大会が切っ掛けです。この大会ではレーサーになる権利が賞品として授与され、ヤン・マーデンボローは見事その権利を手にしてプロのレーシングドライバーになりました。
したがって、経験で備わっていくレーサーの状況判断能力が欠如していて、それが事故に繋がった可能性があります。しかし、ヤン・マーデンボローは粗削りではあるものの、2011年のデビューから事故を起こした2015年までに17回も表彰台に立ったことがあります。その内の1シーズンは782ものドライバーポイントを獲得して総合2位になっているので、ドライバーの経験不足と完全に断定するのは早計だと言えます。
事故で死亡者がいる噂について調べてみた
ヤン・マーデンボローの事故で1名の死亡者が出たのは事実です。原因は速度を出しながらガードレールに突撃した車が観客の安全を守るためのフェンスを乗り越える程に宙を舞い、観客席に突撃してしまったからです。そのため、怪我人も出しておりレースは赤旗で途中終了しています。幸いな事に事故を起こしたヤン・マーデンボローは自力でマシンを降りれた上に、怪我をした観客も病院でメディカルチェックを受けて後日退院しています。
それでも尊い1名の犠牲者が出たのは事実なので、日産は事故に対する悲しみを表明すると共に、原因究明に全力を尽くすことも発表しています。
しかし、2025年現在までに事故の原因が判明したとの情報はないので、もしかしたら今後のレース開催に影響が出そうな事実があるのかもしれませんね。
ヤン・マーデンボローの現在の活動は?
ヤン・マーデンボローは事故発生の翌年の2016年から日本のレース界に参加しています。2016年に参加したのはSUPERGT300クラスと全日本F3選手権とマカオGPのスポット参戦です。しかし、全日本F3選手権の総合2位以外はあまり良い成績とは言えず、ドライバーシートを獲得できないシーズンもありました。そのため、2017年からシミュレータードライバーやテストドライバーとしてレースに関わっており、2025年10月現在は正式なレースに参加したとの情報を確認できませんでした。
まとめ
ヤン・マーデンボローの事故は、観客から死者1名を出してしまった事故として有名になってしまいました。しかし、事故が発生したニュルブルクリンクのコースは、事故が起こりやすくドライバー経験が浅いとスピードの出しどころを誤って判断してしまう可能性があります。特にFlugplatzと呼ばれる勾配エリアは、速度を出しすぎるとマシンがジャンプするほどの危険なセクションなので、ヤン・マーデンボロー以外のドライバーも苦しめられています。